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本超子

2008年07月26日 16:10

1-1

「肝試し?」
 びっくりした。そんな言葉、今の時代に使う奴がいることに。
「そそ。空くん知ってる? 旧図書館の噂」
 旧図書館。
「あれか?」
 指で示す。旧図書館は時計塔の麓にある。
 木下は嬉しそうに首を縦に振った。
「そそ! あそこは曰くつきでね。夜な夜な幽霊が出るらしいんだよ!」
 んなベタな。確かに旧図書館は薄暗いし、何やらよく分らないものがいっぱい詰まってるし気味が悪い。でも今のこの時代に、幽霊なんているって方がおかしい!
「ばかばかしい」
 俺は手元の映像端末に視線を下ろした。次の時間はテストだ。一応しっかり復習しておかなければ。
 木下はそんな俺を見てしばらく黙っていたがやがて、
「ははん」
 と意味深な笑みを浮かべた。というかちょっとムカつく笑みだ。
「怖いの?」
「んなわけねえだろ。だいたい今の時代にそんなもんいるわけがない」
「ははは、甘いね空くんは」
 まるで俺の答えを見透かしていたかのように木下は言った。
「今の時代だからこそいるかもしれないんじゃないか」
「どういうことだ?」
「良いかい? 今の時代は過去のどの時代から見ても科学技術が大幅に発展した時代だ。特に情報技術は言葉ではとても言い表せないくらいに進んだ」
「そうだな」
 確かに今は超情報化社会とでも言うべき技術が様々にある。人は映像によって全てを理解できるようになった。文字を読むなんてことはもう古い。
「でもそれと幽霊がどう関係あるんだ?」
「だ・か・らぁ」
 木下は満面の笑みでその場でくるりと一回転して見せた。よほど興奮しているらしい。
「もしかしたら、幽霊を僕たちで観測できるかもしれないじゃないか!」
「……なるほどね」
 そういや木下はナリの割に情報オタクだったか。それなら幽霊を情報技術の力で暴きたいってのも頷ける。今や情報技術は映像技術も同然だからな。
「でも俺には関係ないし」
「なぁんでよぉ~。行こうよ~」
「腕に絡みつくな! 鬱陶しい。だいたいお前が興味あることなんだからお前一人で行けば良いだろ」
「いや、俺一人は怖いし」
「は?」
 一瞬、木下の顔を凝視してしまった。
 直後、俺の中を何かが迸った。
「てめえ俺に『怖いの?』とか挑発しておきながら自分が怖いたあどういうことだ!?」
「だってそうでもしなきゃ空くん来てくれなさそうじゃないか!」
「だから行かねえって言ってるだろうが! もう絶対行かねえからな!」
 途端、木下は俯いてしまった。
 いや、俺は悪くないはず。たぶん。
 でもこう残念そうにされるとなんか罪悪感を感じる。
「そう。じゃあ」


 ――ガシャン


 背後で機械音がした。
 嫌な予感。
 おそるおそる振り向く。
 巨大なネコ型ロボットがいた。そう、球を二つ重ねたような形状のあれだ。しかし表情はなく、顔はのっぺらぼうだった。怖っ!
「実力行使♪」
 それが俺の最後に聞いた言葉だった。
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コメント

  1. | |

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  2. 小竜龍美 | URL | -

    初コメント失礼!
    空くん、いい性格してるー。いや、木下くんもだけど。
    続き、楽しみにしてますー。
    では、短いながら、失礼いたしました!

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